品質目標

不良ゼロ、活動の達成目標としてはふさわしくない

一日の生活イメージ

 品質改善は指数関数的な減り方をする


 品質不良 ゼロ

という目標を所どころで目にします。

 こうした目標は、達成したい姿としての目指す姿、あるいは、活動のスローガンとして用いるのは良いでしょうが、改善活動における問題発見のギャップ抽出に用いる目標としては適切ではありません。

 特に中間目標やマイルストーン、解決目標としてはふさわしくない目標の示し方です。

 これは、品質改善は指数関数的な減り方をすることが知られているからです。(図参照)
 品質改善への投入時間を増やしていくと不良は減っていきますが、指数関数的な減り方をするので、投入開始段階では急激に不良は減り改善しますが、その後投入時間(工数)を増やしてもなかなか減らなくなります。

 ゼロにするためには理論的には改善に要する投入時間(工数)は無限大、つまり際限なく必要になることを示しています。時々ある時間だけゼロになることはあるでしょうが、観測の揺らぎ(バラツキ)であって継続的にゼロになったわけではありません。

 私たちが行う改善の活動は、有限の資源(リソース)で行うことが普通です。
投入可能な時間(工数リソース)を考えて中間目標や解決目標は設定しなければならないことを忘れないようにしたいものです。その際の投入時間と減り方のベースラインになるのは、以前に行った改善活動の結果です。何人でどのくらいの期間でどんな品質改善が出来たかを振り返ればおおよその目安として利用できます。

 たとえば、前回が2人で半年で不良を半減(50%減)出来た結果を残せたら、それ参照すると、ほぼ図と同じ曲線で改善できることが予測できます。今回も2名で半年の活動期間ならだいたい半分の50%にする目標を立てるか、少しストレッチ(背伸び)して60%減にするかくらいの選択幅が活動を現実的に進めるコツです。倍の4名の人を投入出来るなら70%減(不良 1/3)と設定すると良いでしょう。

 そうはいっても上の人は、「品質不良は「ゼロ」が当たり前だ」と言ってくるかもしれません。
説明してわからなそうな上位の人に反論するのは時間の無駄です。そういうときは「わかりました。目標はゼロで設定します」と答え、内部の活動目標は現実的な削減値を使いましょう。

 品質改善活動は、「下るエスカレータを登るがごとし」と言われます。品質改善活動(登るの)を止めると品質は確実に悪化することを例えています。しかし、改善活動を継続していると確実に不良は減っていきます。

 ある時期の品質不良を100%とすると、1期目は50%減ですが、次の期には50%×50%=25%、3期目は50%×50%×50%=12.5%、以下4期目は6%、5期目は3%、6期目は2%、7期目はなんと1%を切ります。7年継続すれば100%→1%以下に出来ます。

「継続は力」ですね。



目標にはいろいろある

その目標は、どの階層、どんな立場の視点で議論しているかはっきりさせましょう。

体験学習イメージ

 目標という言葉は、いろいろな場面で用いられます。
事業計画の中で示される年度末の到達したい数値としての到達目標が代表的な例です。見えている問題では、この年度の目標をあるべき姿として、現状と比較することになります。

 一方、年度の目標を達成するために計画が立てていると、その途中段階での中間目標を設定する場合があります。マイルストーンという言い方で説明されることがあります。中間目標やマイルストーンは、年度の進捗確認の場での達成度評価の指標となるものです。

 こうした目標を置かず、年度の目標を期間で割って進捗を確認することもあります。たとえば半年たった時点での到達度を評価するなどです。これらも暗黙的な中間目標となります。

 また、計画の中では直近のアクションプランや行動計画の中で目標を設定する場合もあります。年度に対して各月末の到達度を評価するために設定する直近の目標や、あるアクションに対する解決策の実現度を示す解決目標などがあります。

 このように階層別にいろいろな目標を設定することがあるのですが、多くの職場ではこうしたいろいろな階層の目標をひとまとめにして単に目標と言っていることがあります。そのため、上司と部下、あるいは、各現場がそれぞれの立場の視点で目標を捉えていて話がすれちがって混乱している場面を目にします。

 別の章で、 「寛容の原則」についてお話ししましたが、目標についてもどの階層の目標を話しているのか共有できているかを確認しておくことがとても大切です。

おまけの話 「ツボとコツ」

 テレビゲームをしたことのある人はよくわかると思いますが、RPG(ロールプレイングゲーム)型のゲームではダンジョン(戦う場)に入って出て来る多くの敵と戦います。戦い初めは相手も弱いのでなんとかをやっつけるわけですが、終盤になると超強敵が表れて経験値が不足して、あえなく破れーゲームオーバーとなります。しかし、何度も戦っていると戦い方が分かってきてその最強の敵をやっつけることができるようになります。そうした戦い方の「ノウハウ」はゲームのサイトで公開され、周知されたりもします。一方、経験値自体は実際にゲームをして戦いを繰り返さないと高まらないものでした。

こうした知ってわかるノウハウや知識を「ツボ」といいます。「ツボ」は伝えることが出来る知識です。ゲームの勝つ方法や、数学の公式の解法手順などはまさにこの「ツボ」といえます。しかし、経験値を高めるのは試行錯誤し体で覚えるしかないものです。これを「コツ」と言います。

この「ツボ」は、図の整体(マッサージ)における体の不都合を改善するポイントを「ツボ」と呼ぶのと同じで知ればわかります。

 一方、「コツ」は知っただけでは使えない技能的な側面を持っています。数学の公式を「ツボ」といいましたが、実際に使えるようになるには、いろいろな問題を解いてその解き方を身体(頭)に覚えさせなければなりません。学校の授業はこうした「コツ」を習得する場になっています。整体のような技能の「コツ」も同様で、押すコツの1つに「無駄な力を抜いて、深く入れる」というのがありますが、それを会得するには多くの人を実際に押して効果的な方法を身に付けていくしかありません。このように「コツ」は訓練をして身につけていくものといえます。


 コンサルタントの世界では、この「ツボ」と「コツ」の身に着け方には格言があります。


 「まずはツボ(ポイント・急所)、つぎにコツ(テクニック・要領)。反対はだめコツツボ(骨壷)でナンマイダーになる」
 

私たちは、普段「コツ」を求めがちです。早く結果を出したいなら順番に気をつけたい所です。


 もう1つどうしても書いておきたいことがあるのでお付き合いください。もう20年近く前に読んだ忘れられない記事のことです。


 あるアナウンサー(以下 A)と京都のお坊さんの話し


A  「宗教には形式的なことが沢山あるけれどそれをどう思うか?」
坊さん「天才は形式的なことを除いても物事を理解できるけれど
    私のような凡人には形から入るのがいちばん理解しやすい」


 知識だけでは使えない。体験だけでは条件が変わると対応できないものです。型をしっかりと訓練して出来る人とかベテランと呼ばれたいものです。(いつか「守破離」のことも書ければと思っています。

次へ(想定外と変化点へ)







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